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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-16


(日が射せば、祖国の情景を思い出す。)

(闇夜に浮かぶ、月光が照らしている間だけ。)

(灰色の煙に包まれる祖国も、美しく見えた。)

(闇夜が覆い隠してくれる。 醜さも。 寂しさも。)

バキッ

パリンッ・・

「・・ふぅ・・。」

(事は上手く行ったはずだった。 それなのに、
隠れ家の中央に施された。 祭壇の上に眠る人物は。)

(目覚める事無く、冷たく眠るままだった。)

ザリッ・・

(踏み締める、深紫色の靴が。
砕けた硝子の、床を歩いた。)

「・・リザ・・。」

(呟き、祭壇に跪く。 乱れた青い髪の間から。)

(血の様に赤い瞳が。 爛々と光り。
祭壇に眠る女性を見下ろした。)

「どうして・・、目覚めない。」

(透き通る氷が敷き詰められた、その場所は。 砕けた硝子の破片の他、
何も無く。 まるで天井から浸食し、溶け出す黒い染みの影が、



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