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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-17


広いその部屋を上部から暗く、圧迫している。)

(透き通る床の僅かな反射光だけが、部屋に戻ったフェルゼンを照らし出していた。)

(天井へ染み出す、黒い影は。 室内の中央で、凝縮し。 一つの漆黒に染まる玉座を
形作っていた。)

「ふぅ・・。」

(フェルゼンは、玉座に掛けず。 祭壇に眠る女性に、すがりついた。)

「・・リザ・・。」

(フェルゼンは、息を荒げ。 止まってしまった女性の胸元に。
心臓に、耳を当てた。)

(施した魔法は、上手く行っているはずだ。 リザは、死んではいなかった。)

(だが、止まる時は、動き出さず。)

(リザを、美しく眠る。 そのままに留めている。)

「・・答えてくれ・・。」

(フェルゼンは、冷たいリザに頬を寄せ。 鋭く長く、青い爪で、
美しく紫色にカールする。 リザの髪を撫でた。)

(月光に照らされるその祭壇の上に。 天井から、黒い雫が。 一滴。 一滴。
寝台の上に眠る人物の上に。 注がれた。)

(それは。 黒い“闇”を集めたプールの中から、高く。
黒く染まる。 ガラスの天井へと、吸い上げられ。 魔力を使い、
フェルゼンの、首筋に刻まれた、黒い幾何学模様から。 吸い上げた“命”を混ぜ合わせ。)

(一滴。 一滴。 まるで、血を注ぐように。 寝台の上に眠る人物を、
微かな希望で、生かそうとしていた。)



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