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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-18


『“花”に命を与えるのは、あなたではない。』

(リザの魂は、フェルゼンのすぐ傍にあった。)

(リザは、フェルゼンの後ろに立っていた。 浮かび上がるリザの魂は。
亡骸である自身に、すがりつくフェルゼンの背中を。 静かに見つめていた。)

『近づけば近づく程。

あなたは、“花”を枯らしてしまう。』

『可哀想な人。』

(室内に、リザの魂がいることに、気がついていたのは。
小さな黒猫だった。)

「ミュー」

(黒猫は。 透明に浮かび上がるリザの魂に目を向けると。
一声鳴き。 うつ伏せるフェルゼンの傍らに。 小さな足で歩み寄る。)

(柔らかな毛と。 温度で。 フェルゼンを慰めた。)

『私が、見えないのね。』

(探し求める魂は、フェルゼンの傍にあったが。
憎しみの心が、フェルゼンを支配していた。)

(リザは、悲し気に。 その様子を見た。)

『あなたが与えた憎しみと暴力は、

あなたの上に降り積もり。 やがてあなたを滅ぼすのよ。』

『フェルゼン。』



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