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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-193


『千波ちゃん。』

『花が好きだね。』

(その声は、すぐ傍で、聞こえた。)

「聖。」

(千波は、はっとして、顔を上げた。)

『迎えに来たよ。』

『何。 それだけで良いのかい。』

『花屋さん、全部もらおうか。』

『くっ くっ。』

(雨上がり、花屋に来た千波を。
いつか聖は迎えに来た。)

(銀色に流れる髪に。
雨粒が留まる。 包む霧雨が、
千波に、聖の幻を。 思い浮かばせた。)

「聖・・。」

(千波はそっと、
両手に抱く、花束を引き寄せ。)

「・・っ。」

(瑞々しく、花開く。
白いバラの花弁に。 優しく指先で触れた。)

(花束は、聖の香りがする。)



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