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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter104 『風の声』 104-20
(降り注ぐ花弁。 満開の桜に似た。 《聖なる闇の樹の花》)
(空と地面を埋め尽くす。 ピンク色の色彩の中に。)
(黒いドレスに身を包む。 リザがこちらに微笑んでいる。)
「もう一度、あの景色を見たかった。」
ザァァァァーッ・・
(花弁は舞い上がり。 初めて出会った日の。 リザとフェルゼンを包み込む。)
(香りと温度。 色彩。 幻影がフェルゼンを捕えていた。)
(青い爪先が触れるのは。 冷たい氷の様な世界と、リザの亡骸だけ。)
(失った祖国と同じく。 絶望と破壊を前に。)
(フェルゼンには、現実を見ることは出来なかった。)
***
キラキラキラッ・・
「もう一度、あの景色を見たかった。」
(聖は。 異空間の中に生み出した。 自分だけの幻の中に。)
(思い出の粒樹を閉じ込めていた。)
(そこは、二人が初めて触れ合った時のまま。
バラの香りに包まれる、美しい庭を備えた。
アンティークの部屋だった。)
(二人が眠るベッドの上にも。
バラの花弁は、降り注いだ。)
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