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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter104 『風の声』 104-205
(青葉の眠る様子が、あまりに穏やかで。
生前の。 病と闘う姿よりも、より、
幸せな表情に見え。)
(夏樹は、言葉を失った。)
「・・はぁ・・。」
(ふわりと長く、整えられた髪に。
身体に。 千波が、花屋から選んだ、可愛らしく、華やかな生花が、
飾られており。)
(咲き誇る、花畑の中で。
眠っているように見えた。)
「・・っ、青葉。」
(青葉は、夏樹と会った最後に着ていた。
お気に入りのワンピースを着て。 繊細に光る、
アクセサリーが、胸元に輝いていた。)
(重ね合わせた手の指先は、細く。 白い。)
(夏樹はそっと、手を伸ばし。
青葉の手に触れた。)
(自身の身体と同じ。 冷たさが伝わり。)
(夏樹は、青葉の魂が。
もうここには無いことを感じた。)
「(・・・っ。)」
「・・・。」
(深い紺色の瞳が滲み。 青葉に声をかける。)
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