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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-211


(夏樹の受けた傷は、
魔力をはらんでいる。)

だが、それだけではなかった。)

(夏樹の捕らえられていた、
“障壁”の牢獄は。)

(深く、夏樹を蝕んでいた。)

「・・夏樹様。」

(菖蒲は、夏樹を案じた。)

(青葉を、目の前で失ったことは。
夏樹を、深く傷つけた。)

(意識を取り戻してからも。)

(祈りの席にあっても。)

(夏樹は、誰にも多くを語らなかった。)

(それは、静かに。
青葉と時間を過ごしたかったからかもしれない。)

(だが、それだけではない。)

(夏樹は、菖蒲とも。
そつなく、話していたが。)

(不思議と、菖蒲には。
夏樹が、自分を、避けているのではないかと思えた。)

(菖蒲は、皆に混じり。
穏やかな表情で。 夏樹が、屋敷に戻るのを、見届けた。)



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