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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-27


(湊吾は、ゲストの為に、素早くドアを開き。
余裕の笑みを浮かべ。 ゲストに安心感を与えた。)

「よろしゅう。」

(異国の男達に警護された女性が。 湊吾の前に立ち止まった。)

(たちまち漂う、白檀の香りに。 恐ろしい程の強い覇気。
とても隠し通せるとは思えない、その存在に。)

(湊吾は内心笑った。)

「ご安心を。」

(本来、守るべきでない程に。 その女性の強さを、肌で感じた。)

(守るべきはむしろ、この女性が触れるであろう、外の人間たちの方だ。)

(女性の力に、影響を受けぬ様に、その者達から女性を隠すことが、
役目に思えた。)

(湊吾の役目は、彼女を、無事目的地に送り届けることだ。
だが、守るべきは。 彼女ではなく、道筋に訪れるであろう。
遮る者たちの方かもしれない。)

「くすすっ。」

(彼女もまた、余裕の笑みを浮かべていた。)

(道中を楽しむように、目新しい、初めて訪れる国の景色に。
嬉しそうに笑った。)

「期待している。」

(赤い唇が、囁き。 鮮やかな化粧の目元が、湊吾に微笑んだ。)



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