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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-3


(追い駆けて来た大臣に、滝川は続けた。)

「人間は、賢くあるべきだろう。」

「人間に、与えられた生を全うし。

与えられた、この地をこの国を守って行く。」

(大臣は、身を乗り出した。)

「・・っ、先生は。 “時の欠片”も欲しくはないと?」

(滝川は笑った。)

「あははっ。 私は、“総理の椅子”さえも欲しくはないよ。」

「私が欲しいのは、この国の平和だ。」

「願わくば、世界の平和だ。」

(美しい理想を口にする、滝川の目は笑っておらず。
大臣は、滝川の心の奥を、読むことが出来ずに。 そら恐ろしい覇気を感じ、
身震いした。)

「“時の欠片”。

それは、この地を守る、彼等への対価と見るべきだろう。」

(滝川の口元は微笑んだが、目は鋭く光っていた。)

(滝川に、覇気が宿っているのは、この建物の地下深く。
足元に、幾重にも重なる岩盤の下に。 捕えているものが何か、
知っているからだった。)

「“時の欠片”は、FOTに与えるべきだ。」



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