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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-36


(ソラは、優しく微笑んだ。)

(だが、紫苑は、首を振った。)

「ううん・・。」

(紫苑は、疲れ切った様子で、表情は、沈んでいた。
可愛らしく、カールしていた髪は、乱れ、
血の気が引いた頬に掛かっている。)

『・・・。』

(紫苑は、夏樹の部屋に入り、顔を上げると。
ボードに貼られた、写真の中に。 自分と並び写る、
夏樹の笑顔を見た。)

(そして、“闇”を示す資料が置かれる、机の上の片隅に。)

(小さな油絵が、飾られているのを見つけた。)

「・・・っ。」

(それは夏樹の誕生日プレゼントに、紫苑が描いた、
桜ヶ丘の、桜の絵だった。)

「はぁ・・っ。」

「わたしもここに。」

「夏樹くんが戦っているんだもの・・。」

(紫苑の目には、まだ涙が浮かんでいた。)

(だが、きゅっと結んだ口元。 胸元を握る手。
皆と前を見る瞳には、力が宿っていた。)



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