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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-43


白衣の彩を抱いた。)

「・・っ! 彩・・。」

「ありがとう・・! 彩・・っ!」

(静乃の手にも、華やかな花柄の服にも。
菖蒲の血痕が残っていた。)

(最後に抱き締めた時の、菖蒲の凍えるような感覚が、
静乃の手に、身体に残り。
静乃の時は、止まっていた。)

(彩の言葉で、再び、自分の身体に。
指先に、体温が戻り始める。)

(恐怖の時から解放され。 静乃は、
彩の胸の中で、むせび泣いた。)

「・・静乃・・。」

(彩は、救えた喜びに、
震えた。 この瞬間、間違いなく、
彩は。 医者に戻っていた。)

「礼を言うのは、私の方よ。」

(彩は、涙を拭い。 過ちを犯した自分に、
償いの道を与えてくれた、友に。
感謝の想いを込め、熱い瞳で、静乃を見つめた。)

「ありがとう。」

「もう一度、私に。

生きるチャンスを与えてくれて。」



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