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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-45


(彩を手伝い、治療してくれたのは、研究所で彩の助手を務めていた
真紀だった。)

「真紀さん・・。」

「ありがとう。」

(静乃は、緊張したまま。 そっと、カーテンで仕切られた、
ベッドの上を見た。)

(カーテンの向こうに、菖蒲が眠っているのが見える。)

「傍に居てあげて下さい。」

(真紀は、微笑み、部屋を後にした。)

カチャンッ

(静乃は、深呼吸し。 二人だけになった部屋で。
カーテンを越え、菖蒲の側に近づいた。)

『・・・。』

「菖蒲くん。」

(静乃はベッド脇の丸椅子に腰かけ、目を閉じる、菖蒲の顔を見つめた。)

(顔色は蒼白だったが、静かに上下する胸元が、穏やかな呼吸を伝える。)

(枕元に置かれた、粉々に砕けた眼鏡が、あの時の衝撃を思わせる。)

「・・ほぅ・・。」

(静乃は深く息をつき。 安堵し、菖蒲の額にかかる、
長い前髪にそっと触れた。)



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