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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter104 『風の声』 104-63


「ふっ・・。」

(古びた狭いアパートから、路地に出た勝は、
煙草を片手に、むさ苦しい無精ひげで笑った。)

「・・匂うぜ。」

「・・、段々と。」

「信実に近づいているようだぜ。」

「咲。」

(勝は煙草の煙の向こうに、輝く青空に、目を細めた。)

***

(観覧車を見上げる、晴の胸は、不安に高鳴った。)

『オレたちの、見えないところで。』

『何かが起こっている。』

(晴は鞄を握る手に、力を込めた。)

『もうあんなこと、お越させちゃいけないんだ。』

(元の姿を留める、観覧車を見上げる。
晴の目は、鋭かった。)

(その向こうに、昨夜見た景色を忘れることは出来ない。
襲い来る魔物。 戦う人々。 倒れた少女。)

(残像が、晴の目に焼き付いていた。)

***



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