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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-10


『“鍵”を保つのに、この身体はそれ以上、時を持たぬ。』

(“鍵”にかけられた、“闇化”を起こす、闇の魔女リザの呪いは、
夏樹の命が尽きた時に、解かれるのだ。)

(もし、夏樹から呪いのかかった“鍵”を取り出し、壊すことが出来たとしても、
“鍵”を壊すだけでは、十分でない可能性がある。)

(そして、幼いころ死んだはずの夏樹の身体は、命を生み出す“時の欠片”、
“鍵”を失えば、生きることが出来ない。)

『呪いが解けた時、生きることが出来るかなどと、問い続けて欲しくない。』

『呪いに囚われるな。』

『そなたの時を生きよ。』

「与えられた今を、楽しめ。」

「そなたの命運が、待っておる。」

(夏樹は驚きながら、沙羅の抱擁を受けた。)

(白檀の香りと、沙羅の熱い思いが、夏樹に届く。)

「!」

(呪いを解くことを目的に、生きて欲しくなかった。 それは不可能に近く。
“闇”ばかり追うことになる。)

(残された時は短く。 遠い未来を追えば、今を見失う。)

(答えは、ここにあると。 すでにあるのだと、気づいて欲しかった。)

「はい。」



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