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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-15


「これで、良いのでしょうか?」

(剃髪した長身の男性が、沙羅の隣で、夏樹を見送った。)

(緑色の。 裾の長い、着物には、美しい刺繍が縫い込まれ、
腰紐が棚引く。)

(鋭い視線を投げかけるのは、第一国の女王、沙羅の従者、無憂だった。)

「危険が迫るのでは。」

「能力者が、人間の中で暮らすことは、

まだこの国では出来ない。」

「“鍵”が奪われるのでは?」

(沙羅は、長い睫毛の瞳を細めた。)

「させぬ。」

「困難は待ち受けよう。 じゃが、力を貸してくれる者も居る。」

「石垣は無能だ。 あの者の許可が無い以上、人間に対して、わらわは表立っては

動けぬ。」

「じゃが、フェルゼンという、異国の能力者を抑制出来よう。」

(沙羅が微笑んだ。)

「敵は一人だ。」

「わらわを敵に回せば、この第二国だけでなく。 第一から第四国。」



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