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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-150


(涼が浴びせた、水が、ぽたぽたと滴っている。)

(夏樹は、拭うこともせず、水は白い肌を伝い。
白い制服のシャツを、濡らした。)

(それでも、避けることなく。
深い紺色の瞳は、涼を見つめ。 微塵も動くことが無い。)

「・・・っ!」

(涼は、たじろいだ。)

(深い紺色の瞳は、夏樹の心を映し。
真っ直ぐで、透き通り。 涼の心を射る。)

(誠実な眼差しと、煌めきは。
信じ得る人物だと、涼は直観した。)

「くそ・・っ。」

(涼は、怒りに震え。 夏樹から視線を逸らし。
右手の拳で、自身の足を打った。)

(理屈と、心が。
紫苑への想いが、涼に夏樹を許させなかった。)

(それなのに、直観は。
夏樹を信じろと、告げていた。)

「ごめん、涼。」

(夏樹は、深々と、頭を下げた。)

(視線を落としたまま、夏樹は。
涼の、人々の怒りと。 自身の想いを、噛みしめた。)



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