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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-154


「皆を巻き込んだ。」

「こうして、君は、逃げないで居てくれるのに。」

(涼は、怒りの感情の中に渦巻く、夏樹への不思議な想いに。
唇を噛んだ。)

(夏樹の持つ、隠された能力のせいなのか。
風を使えないはずの、夏樹の、白い肌から。)

(目に見えない、波動が流れ出て。 不思議な魅力を持ち、涼に届くようだった。)

(そのエネルギーは、不思議と、涼の怒りの傷跡にそっと触れ。
静かに癒す。)

(ただ者ではない、夏樹の持つ、エネルギーが涼を包み。)

(涼は、静かに、夏樹を見返した。)

(憂う夏樹の深い紺色の瞳は、自身の心と向き合い、揺れ。)

(細く白い、指先が。 掴めない未来を掴むように。
揺れる紺色の瞳の前で、握られた。)

「それなのに、自分に出来ることは。

風も使うことが出来ない、自分に出来ることは。」

「ただ、詫びることだけか・・。」

「道は、ここにあるのに。」

「僕は、目の前の君を、守ることも。

いや、目の前の君と。 思い合い、伝え合うことも出来ない。」



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