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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-158


「決まりだから、話せば聞いた者に罰を与えられるから。

僕は話さなかった。」

(声が詰まり、上手く言葉に出来ない。)

「Fragment of Time 通称FOTは、僕の誇りだ。」

(最も話したい、夏樹の思いを。 話すべき人は、
そこには誰も居ない。)

「皆をだまし、皆に受け入れてもらおうとしていたんだ。」

(夏樹の声は、震えた。)

「話せない僕に、皆は優しくしてくれた。」

「勉強に付いて行けない時は、

教えてくれたことも・・。」

(零れる涙を、抑え切れず。)

(夏樹は、白い両手で、顔を覆った。)

「・・ありがとう。」

(伝えるべき言葉は、空の教室に、荒れた風景の中に、
虚しく響いた。)

「本当に、ごめん。」

(言葉は無力で、巨大な恐怖を前に。)

(夏樹の言葉を受け取れる者は、誰一人居なかった。)



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