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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-165


(わずか、一、二歩先に居るはずの。)

(目の前の扉の向こう、菖蒲の存在を想った。)

タッ

「夏樹! 大丈夫か。 すぐそこに、菖蒲が居る。」

「気を付けて、帰れ。」

(心配した駆が、戻り、夏樹を背後から支えた。)

(わずかな距離だが、夏樹には、扉の向こうを遠く感じた。)

(ここに居るはずの、駆の声も、ニュースが掻き消し、
夏樹の心に届かない。)

「はぁ・・。」

(夏樹は、白く震える指先で、
校舎裏の扉へ、手を伸ばした。)

《風見市民は、感染の可能性が高い。》

《政府の保護領域外へ逃亡した、能力者が、

死亡した少女に、接触した疑いがあり。

発表に踏み切りました。》

《風見市の人々、周辺の人々に、》

《不安が広がっています。》

(夏樹の指先は、ドアを掴もうとしたが、ニュースの言葉が、夏樹を捉えて離さない。)



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