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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter105 『風と共に』 105-167
(菖蒲は、燕尾服を着た両腕で、夏樹を強く抱き締めた。)
「大丈夫です。 皆、ここに居ります。」
(菖蒲は、夏樹の心の奥に届くよう、ゆっくりと。
落ち着いた声で。 深く、語り掛けた。)
「夏樹様。」
(夏樹を、抱き締める菖蒲の、四角い黒縁眼鏡の奥の瞳は。
真剣な眼差しで。)
(微笑みを宿していなかった。)
(世界を変えてしまった、そして、主人を苦しめる、
悪に対して。 怒りと、悲しみを抱いていた。)
『・・菖蒲・・!』
(夏樹は、驚き。 いつも間近に感じる菖蒲の存在を、
その腕に感じた。)
「ご無理なさらず。」
「私は、ここに居ります。」
(気づかぬ内に、夏樹の心は、膨大な感情とエネルギーの中で、
身動きが取れなくなっていた。)
(思いの外、ダメージを受けていることに、
自分でも気づいていなかった。)
(耳元で聞こえる、菖蒲の声が、
夏樹の心を留め。)
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