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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-168


(束の間、心の“闇”の中から、
現実へ、引き戻した。)

「はぁ・・。」

「ああ・・。」

「・・ありがとう。」

(夏樹は、力強く自分を抱き締めている、菖蒲の
燕尾服の背中に。 白い両手を回し、
菖蒲の存在を、その手に確かめた。)

「・・はぁ。」

(夏樹の、体温の低く、冷たい手が、
菖蒲の背中に触れ。)

(菖蒲は、その冷たさに。)

(主人がここに居ることを実感し。)

(自分が守ると、心に誓った。)

「夏樹様。」

(夏樹の白い手は、背中から菖蒲の、
一つに縛った長く、黒い後ろ髪に触れた。)

「・・ふっ。」

(夏樹の心は、現実に戻り、
菖蒲に支えられ、泣いた。)

「これが、現実の世界だ・・。」



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