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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-190


(それなのに、誠司は。 夏樹を案じ、夏樹に愛情を向けてくれていた。)

(FOTの皆も、危険に身を置きながら。 それでも、snow dropに、
夏樹に。 守りを与えてくれていた。)

「・・・っ。」

(夏樹は、テレビから聞こえる声に、うつむき、皆の想いに目を閉じた。)

「夏樹。」

(リビングへと続く、キッチンから。 温かい飲み物を持ち、
千波は夏樹の傍に来た。)

「あなたは、“時の欠片”よりも、ずっと大事なのよ。」

「“時の欠片”も大事。」

「だけど、あなたのことも大切にして。」

(千波は、そっと、冷たい夏樹の手の甲に温かな手を重ねた。)

(夏樹の傍に屈み、憂う夏樹の深い紺色の瞳を、間近に覗き込んだ。)

「誠司さんにとっても、皆にとっても。」

「わたしにとっても。」

「あなたが、大事なの。」

「夏樹。」

(千波の思いは、必死だった。 夏樹の思いを、留めて置くことは、
出来ないように思えた。)

「千波ちゃん・・、僕は。」



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