HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-197


(紫苑は、自分に言い聞かせ。)

(温かな鍋を見つめ、かき混ぜた。)

「夏樹くん。 がんばって。」

「美菜も、きっと大丈夫。」

(紫苑の声は震えた。)

「こんな風に、いつも通りに。」

「いつも通りに、していないと。」

「涙が出そう。」

(隣に立つ千波は、そっと、紫苑の背中をさすった。)

「紫苑ちゃん。」

「大丈夫。」

「・・大丈夫。」

(紫苑は、堪えきれず。 お玉を片手に、
微笑みながら、涙した。)

「うん・・。」

(キッチンに立つ、女の子たちは、
いつもと同じに見えた。)

(キッチンの賑やかさと、立ち込める香りはいつもと変わらない。)

(けれど、リビングに流れるニュースと、
夕飯の準備と共に作られる、非常用の食糧の準備に。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ