HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-2


(静乃は微笑み、良い香りの紅茶を、沙羅に勧めた。)

「ここでもう少し、ゆるりと。 と、思うたが。」

「明日、風見市へ戻ると、聞いたのでな。」

(沙羅は美しい指先を開き。 ほう。と、紅茶の香りを楽しんだ。)

「まだ、傷は癒えまい。」

(天女の様に纏う衣が、陶器の様に美しい白い肌に、流れる。)

(指先を動かすと、白檀の残り香が。 憂い瞳を伏せると、
長い黒髪が、肩に揺れ。 透き通る、花の髪飾りが、
朝日に煌めいた。)

「だが、戻ると。」

「ソラが言うておった。」

(長い睫毛が瞬き、鮮やかな化粧の赤い口元が、微笑む。)

「ええ。」

(静乃は、心配そうに、頷いた。)

「その前に、手続きをと思うてな。」

「これは、我らが掟では、正式なものじゃが。」

「第二国の主。 石垣には、通じぬものであろう。」

「それでも、他国の者には、効力がある。」

「まぁ・・。 わらわでは、聖の代わりには、なれまいが。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ