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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-208


(夏樹の胸を、ぎゅっと掴んだ。)

「はぁ・・っ。」

(思わず触れた、胸元に、細い鎖で繋がれた、銀の指輪が鳴った。)

チリッ・・

(圧力から抜け、開かれた空間通路の向こう側に降り立った夏樹の前に。
“闇”はおらず。)

(頬を撫でる風は、通り過ぎるだけだ。)

(鼻に触れる、風の匂いは、雨の香りで。)

(目の前の街は、夕暮れと。 雨を運ぶ、厚い雲に、
覆われ始めていた。)

「美菜・・!」

ダッ・・

(夏樹は、感傷を振り払い。
美菜の家に向かい、走った。)

(雨の匂いの他、そこに“闇”は居なかったが。
居るのは、現実の。 警察や、特殊部隊。
マスコミ。 混乱する人々だった。)

「待て・・!」

(それらの人々に、夏樹が届く前に。
空間通路の出口で、すぐに。
夏樹は、強い腕に、引き止められた。)



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