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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-210


(残酷な聴衆は、風見市の人々を案じながらも。
危機を煽る、エンターテイメントとして、楽しみ。 見たがった。)

(恐怖と、侮蔑。 可哀そうと思いながら。
自分がその当事者ではない安堵。 不安な時代の中で、
人々の醜い心と。 欲望があふれた。)

(風見市の内部に取り残された人々は、絶望と恐怖に支配され。)

(防壁の向こう側で、守られた人々は。
安全な場所から、他人事の目で。 事の顛末を、心の奥で楽しんだ。)

(そんな人たちばかりではなかったが、風見市の人々に向け。
行動出来る、勇気のある者は、少なかった。)

(ましてや、風見市の中では。 “闇化”する恐れのある者。
石垣の率いる政府に目を付けられた者。
それらは、排除すべきもので。 嫌悪され、社会から弾き出された。)

(その手が、目の前の、クラスメイト、美菜に迫っていた。)

「出来ない、放っておけない!」

(翼は、夏樹を離さず、強く腕を掴んだ。)

「落ち着け。」

「お前が行けば、思うつぼだ。」

「格好の餌食になる。」

(翼は、サングラスの奥で、鋭い目を光らせた。)

「良い方法がある。 仲間の警察を呼んでいる。」



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