HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-22


(音々の心は、彷徨っていた。)

「音々!」

(繁華街の中、当ても無く歩く音々は、いつの間にか裏通りに来ていた。)

(子供が足を踏み入れない場所は、薄暗く、怪しげな明かりが灯っている。)

(大人達の好奇の目が、小柄な少女、音々に向けられていた。)

「はっ!」

(後ろから強く腕を引かれ、呼び声に、振り向く。)

「・・麗。」

(長身の少年が、心配そうに音々を見下ろした。)

「良かった。 ここに居て。」

「探したんだ、音々ちゃん!」

「昨日から、帰っていないって、おばさんから連絡が。」

(麗と呼ばれた少年は、音々の顔を見ると、少し安堵するように、
息をついた。)

「・・あの人は、間違ってる。」

「父は、すべて正しいのに。」

(音々の足元はふらつき、短い黒髪が、俯く頬にかかる。)

(うわごとのように、呟き。 カラフルなネイルの、震える指先で。
端末の画面に触れた。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ