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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-225


(夏樹は、全容をまだ知らず。)

(自身の存在と、“鍵”と、能力を想う時。)

(わずかに、その封印された記憶の、入り口が心に甦った。)

「ふっ・・。」

「あんなに、あんなに毎日戦っていたのに。」

「どうやって、力を使っていたのか、分からないんだ。」

「あんなに簡単に。

呼吸するのと、同じように、

風を操ることが出来たのに。」

(母を亡くしたあの日から、初めて風を使ったあの日から。
夏樹は、風と共に生きて来た。)

(それは、父が残してくれた力であり、
母が、気づかせてくれた力であり、母は、それと引き換えに、
命を落とした様なものだった。)

「どうやったら良いのか。

分からない。

全然、分からない。」

(夏樹は、何も掴めない両手を握り締め。 強く、瞳を閉じた。)

『自分の存在する意味さえ、見失ってしまいそうだ。』



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