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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-226


『僕がここに居る価値は、何も無いように、

感じた。』

(こんな時、遠く、封印された、子供の頃のその記憶が、
夏樹に呼び掛けて来る。)

【どうして、まだ生きているんだよ。】

【お前には、何の価値も無いのに。】

【お前の他に、生きるべき人が、居たのに。】

(夏樹は、白い肌の両手で、耳を塞いだ。)

「は・・っ!」

(目を閉じ、心の奥底に、呼びかける声に、意識を向けた。)

『どこだ・・。』

『あれは、子供の頃の記憶・・?』

(夏樹は堪える様にぎゅっと、唇を閉ざした。)

(そうでなければ、もう終わりにしてくれと、
叫び出してしまいそうだった。)

『僕は、子供の頃。』

『研究所に囚われていた。』

(心の中に甦るのは、風見市とは別の、海辺の小さな街。)

(母と、父が出会った街。)



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