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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-233


「お前、迷子か?」

「分かった。 連れて行くよ。」

(柴犬の、黒い小さな瞳が、ソラの水色の瞳を真っ直ぐに見ていた。)

「急ぐぞ。」

(ソラは、雨水に濡れた手で、子犬を拾い上げ。
自分の上着の中に、胸元に入れ。 ジッパーを閉め、雨に濡れないようにした。)

ダッ・・!

(ソラは、再び走り出した。)

(触れた時、子犬は雨にまだ濡れていなかった。 周りには誰もおらず、
ソラには、子犬が、どこからか突然現れた気がした。)

(いぶかしがりながらも、どうしてか、連れて行くことに決めた。)

***

キィィーンッ・・

「夏樹様・・!」

「しっかりしてください。」

(雨の中、真っ先に、夏樹のもとに辿り着いたのは、リムジンで空間通路を走り抜けた、
菖蒲だった。)

「夏樹様!」

(菖蒲は、燕尾服が濡れるのも気にせず、夏樹の前に、跪いた。)



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