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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-234


バシャッ・・!

「夏樹様・・っ!」

(菖蒲は、夏樹の様子を見て、恐怖に駆られた。)

(夏樹の顔は、蒼白で、表情を無くし。)

(深い紺色の瞳は、ここではない、遠くを見ていた。)

『もしや、その心は、“闇”に囚われてしまったのでは・・。』

『わたしを見てください、夏樹様・・!』

「・・夏樹様・・!」

(菖蒲の目に、涙が浮かんだ。)

(四角い黒縁眼鏡の奥の、瞳が滲む。)

(まだ降り続く雨の、大粒の雫が、眼鏡硝子に残り、
視界を塞いだ。)

『夏樹様・・っ。』

『こんなに苦しむ日が、来るなんて。』

(菖蒲は、たまらず。 白手袋の片手で、
夏樹の背中を支え。 もう片方の手で、
夏樹が握っている、夏樹の胸元に触れた。)

「夏樹様・・! 離してください。」

「離して下さい!」

(菖蒲の白手袋の手は、必死に、夏樹の胸元の手を抑えたが。)



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