HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-235


(夏樹は、自分の胸元を。 まるで、傷つけるかのように、
強く握り、離さず。 首を振った。)

「・・・っ!」

(夏樹は、自分の中に眠る、“鍵”を壊したかった。)

チリンッ・・!

(だが、不思議な輝きを放つ。 胸元にかけられた、小さな銀の指輪が。
それを阻むように、熱を持ち。 消えない光を灯した。)

「夏樹様・・っ。」

(夏樹は、答えられず、苦しみの中に居た。)

(深い紺色の髪は、雨と泥に汚れ。 白い肌は、表情を無くし。
見開く深い紺色の瞳は、絶望を見ていた。)

「初めて、この街に来た時のことを、覚えていますか?」

(菖蒲はたまらず、夏樹に話しかけた。)

「あの時、この街は、輝いて見えました。」

「ですが、それが本当の姿だったでしょうか?」

「結界に閉ざされ、わたしたちは、互いに、

本当の姿を知らなかった。」

「私たちは、真実に近づいたんです。」

「それが、何をもたらそうと。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ