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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-236


「私たちは、今日という未来に向かった。」

「夏樹様。」

「私たちは、一歩、進みました。」

「これは、とても痛みを伴うものです。」

「けれど、失っただけではありません。」

「私たちは、進む道を探しましょう。」

「夏樹様・・っ。」

(菖蒲は、夏樹の考えを変え、意識を取り戻そうと、
必死に語り掛け、夏樹の身体を、温めようと揺すった。)

「・・(菖蒲・・。)・・」

(夏樹は、虚ろな瞳で。 微かに意識を向けた。)

「・・僕は・・。」

(夏樹の声は、かすれた。)

(信じていたものが、打ち砕かれたように思えた。)

(風を失い、自分の存在と。 自分の中に流れる、“闇”の、
恐ろしい悪を、体感し。 目の前の街を壊す。 現実のものとなった。)

『青葉・・。』

『彼女の、笑っていた顔が、

思い出された。』



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