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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-239


***

「はぁ・・っ。 はぁ・・。」

(意識が戻れば、一寸刻みに。

痛みと、眼前から離れない光景がよみがえる。)

(“闇”に飲み込まれる方が、楽だった。)

(“闇”が、すぐ傍で、

夏樹の顔を覗き込み。

手招きしていた。)

「夏樹様・・!」

(菖蒲は、夏樹を離さなかった。)

「うっ・・。」

(菖蒲が、伝える、熱が、次第に。
夏樹に伝わり、夏樹の意識を、呼び覚ました。)

『傷口は、開いたまま。

絶えず、血を流し続けた。』

『涙がわけもなく浮かび、流れる。

涙が伝う、目元に熱をもたらし。』

『その熱が、生きていることを、実感させた。』



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