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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-24


「あたしは・・、絶対に。」

「あいつを許さない!」

(カラフルな色彩に包まれる、音々の服が、揺れた。
鮮やかな色と裏腹に。 音々の心は、暗く絶望に沈んだ。)

(短い黒髪が、音々の背中が、再び人波に飲まれる。)

(音々は、麗を振り払い、夜の灯りの中へ、走り出した。)

「音々!」

(麗は、苦い想いで、音々を追いかけた。)

***

「・・はぁ・・。」

「・・っ。」

(夏樹は、胸元に触れ。 自室で立ち止まった。)

「夏樹様。」

(荷解きをしていた菖蒲が、気づき。 夏樹に近づいた。)

「久しぶりで、お疲れが出たのでは。」

「もう、休んで下さい。」

「あとは、私が。」

(白手袋の手が、夏樹を支え。 四角い黒縁眼鏡の奥の瞳が。
微笑んだ。)



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