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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-245


「日常を奪った。」

(零れ落ちる涙と、雨の雫が混じる。)

(それでも、深い紺色の瞳は、強さを失わなかった。)

「この先、僕が、“闇”に飲まれない保証などない。」

「もし、僕の力が。

暴走し、

子供の頃の様に、誰かの命を奪ってしまったら・・。」

「それでも、僕を生かしたことが、正しかったと言えるだろうか。」

(菖蒲は、封印されている、夏樹の幼い頃の記憶を思い。
息を飲んだ。)

チリンッ・・

(掴んだ夏樹の白い手が、胸元の指輪に触れた。)

「僕は、この戦いを終わらせる方法を知っている。」

「知っているのに、生きたいと思っているんだ。」

「終わらせることが、出来ないんだ。」

(菖蒲の目から、涙が零れた。)

『夏樹様・・。』

(夏樹は、それでも、生きることを選んだ。)



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