HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-246


(主人の苦しみを思い、菖蒲は共に苦しんだ。)

(それでも、主人が、生きることを選んだと知り。
強い思いが、菖蒲の胸の奥から湧き上がり、喜びにも似た思いが、
菖蒲の心を震わせた。)

(夏樹は、力無く、微かに表情を崩し。
いつもの輝きを映す、深い紺色の瞳で。 菖蒲を見た。)

「こんな街と、人々を目にしながら。

僕は、僕を終わらせることが出来ない。」

「僕は、最低だ。

僕は、風を・・。

風を、求めている。」

(夏樹は、抱えていた思いを。 正直に、言葉にした。)

(深い紺色の瞳は、優しく、揺れた。)

「僕は、風と、生きたいと願っている。」

(それが、夏樹の思いだった。)

(それを選ぶことが、どういうことか。 何を意味するのか。)

(全てを受け止めても。)

(それが、夏樹の答えだった。)

『風が欲しかった。』

『それは、この街と、人々を守りたいからなのか。』



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ