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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-256


「あっ、そうそう。」

「付いてきちゃったんだよ。」

(ソラは、微笑みながら、上着のジッパーを開けた。)

「きゅんっ」

(夏樹は、ソラの胸元から顔を覗かせた、ふわふわの黒い子犬の顔を見つめた。)

「!」

「・・ぽんた?」

(夏樹は、思わず驚いた。 子犬が、見覚えのある子犬にそっくりだったからだ。)

(子供の頃、母と共に、幸せな時間を過ごした子犬。)

「くっくっ。 なんだ、夏樹の知り合いか?」

(驚きと、喜びに表情を変えた、夏樹を見て。 ソラは、微笑んだ。)

「いや、まさか。 でも、そっくりだな・・。」

(小さな柴犬は、耳が垂れ。 目の上と足先。 お腹が茶色で、
黒い毛の子犬だった。)

「子供の頃、母と、千波ちゃんと。 一緒に過ごした、子犬にそっくりなんだ。」

(深い紺色の瞳で、瞬き、目を丸くする。 夏樹の様子を見て、
ソラは、ほっとして、笑った。)

「帰ろうか。 雨がまだ、強く降る。」

(闇夜の中で。 雨は、まだ降り続いていた。)



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