HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-259


(頭で分かっても、夏樹はまだ、風に触れることは出来なかった。)

(それでも、心は。 前を向き始めた。)

「帰ろう。 菖蒲。」

「心配をかけて、ごめん。」

(菖蒲は、艶やかな燕尾服と、一つに縛った、長い黒髪に。
雨粒を受けながら。 微笑み、頷いた。)

「はい。 帰りましょう。」

(菖蒲も、これからも共に戦う決意を込めて。)

(力強く、頷いた。)

「夏樹様、あの子犬は?」

(夏樹は、思わず微笑み、子犬のことを語った。)

「連れて行こう。」

「春日家の人たちが、良ければ。」

「名前は・・。」

「ぽんた。」

「ソラに付いて来たんだって。」

「まさかと思うんだけど。 昔、子供の頃、飼っていた子犬に、似ているんだ。」

「・・、僕は、その子犬だと思う。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ