HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-269


(涼は、夏樹が来てから、紫苑がずっと、生き生きしていたことを
認めていた。)

(紫苑の、夏樹への想いも。 気付いていた。)

「けど、辛そうだ。」

「辛そうなんだよ!」

「見てて、分かる。」

「ずっと、俺は、お前のことを見てきた。」

「だから、分かるんだよ。」

(紫苑は、間近で涼の顔を見つめた。)

『涼くん・・。』

(見つめた、紫苑の明るい茶色の瞳は、涼を見ていない。)

(たった一人、夏樹だけを見ていた。)

「・・・っ。

何で、あいつなんだよっ。」

「くそっ!」

(涼は、雨の中、確かに、両手に紫苑の両肩を抱いていた。)

(それなのに、紫苑の心は、たった一人、夏樹だけを見ている。)

「紫苑・・。」

(涼は、紫苑のことが、愛しくてたまらなかった。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ