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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-281


(紫苑は、雨粒を弾きながら。
夏樹のもとへ、駆け寄った。)

「夏樹くん。 大丈夫・・?」

「泣いてる・・。」

「泣かないで。」

(紫苑は、ずぶ濡れの夏樹に、桜模様の雨傘を差し掛けた。)

「・・うっ。」

「・・ごめん。」

「大丈夫。」

「大丈夫だよ。」

(夏樹は、静かに紫苑に答え。 紫苑の肩に、頬を寄せた。)

「夏樹くん・・。」

(紫苑の、明るい茶色の瞳は。 雨粒に揺れた。)

(夏樹の心は泣いていた。 それでも、今までとは違っていた。)

(夏樹は、紫苑のもとに、戻ることを選んだのだ。)

「・・っ。」

(紫苑の心に、熱い想いが込み上げた。)

「お帰りなさい。」

「すっかり、冷えちゃってる。」



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