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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-282


(紫苑は、微笑み。
自身の頬に流れる、涙と雨の雫を拭い。)

(夏樹の、深い紺色の髪と。 蒼白な頬に触れた。)

「こんなに濡れちゃって。」

「早く、お風呂に入らないと。」

(その言葉に、夏樹は瞬き。 顔を上げた。)

「紫苑さん。 少し、千波ちゃんに似て来たね。」

(紫苑も、瞬き。 夏樹を見上た。)

「当たり前でしょう。」

「わたしもしっかりしなくちゃね。」

(紫苑は、涙に濡れた瞳で明るく答えた。)

パシャン

「ソラくん。 夕飯の支度出来てるから。」

「温かいうちに、食べよう。」

(そう言って、微笑む紫苑は。 雨に濡れ。
夜風に吹かれた髪は、乱れていた。)

(それなのに、雨と涙に弾く。 睫毛も。 夏樹を見て、微笑み、
紅潮する頬も。 艶やかな髪も。)

(全て輝いて見え。)



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