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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-287


『ここに、皆と居られるだけで、奇跡なのだから。』

(夏樹は、噛み締める想いで、春日家の玄関を上がった。)

***

シャーッ

(夏樹は温かなシャワーを浴び。 足元で、お湯の雫を浴びる、ぽんたに
束の間微笑んだ。)

『これから、どんなことが起こるか分からない。』

『僕たちは、わずかの間、ここに居ることを、許されただけかもしれない。』

(押しつぶされそうな、想いを堪え。 柔らかな、ぽんたの頭を、ふわふわの泡で
洗った。)

「きゅ〜ん」

(夏樹は、ぽんたの温かさに、涙が込み上げた。)

「・・っ。」

「どうしてだろう。 涙が出る。」

(夏樹は、ぽんたを愛しく思いながら、柔らかな垂れた耳や、黒い毛の頬を洗った。)

「君は、生きているのかい?」

(遠い過去に居たはずのぽんたは、確かに温かかった。)

「僕は・・。」

(夏樹は、ぽんたを洗い流し。 共に、湯船に浸かった。)



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