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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-301


(全身で、風を受け止めた。)

「風は、大きい。」

(夏樹は、風を、受けた。)

(深い紺色の髪が、なびき。 白い肌に、朝日が差し込む。)

(呼吸する胸に。 冷たい肌に。)

(すべてを吸い込むように。 魚が、水を得る様に。)

(夏樹が求めるものが、そこにあった。)

(風は、夏樹に答えを与えず。)

(ただ、そこにある。)

(それが、答えに思えた。)

(それが、夏樹に必要なものだ。)

(それは、まだ夏樹には遠くにある。)

(遠くにあったが、夏樹は。 これまでで一番、強く。
肌で風を感じた。)

「夏樹様。」

(呼び止められ、夏樹ははっと、我に返った。)

(風に満たされ。夏樹は、ゆっくりと、目を開けた。)

ザァーッ



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