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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-35


パタンッ

(閉じた扉の前、廊下で立ち止まる紫苑に。
声が聞こえてくる。)

『彼を愛せば、あなたは苦しむ。

わたしと同じように。』

(紫苑の前には、一人の女性の姿があった。)

(薄紫色の、長いソバージュの髪。 纏う黒いドレス。)

(それは、“闇の魔女”リザの本当の心だった。)

「はぁっ・・。」

(紫苑は息を飲んだ。)

(紫苑は幾度か、その姿を見ている。)

(それは次第にはっきりとして来た。)

(リザの声が聞こえるのは。 紫苑に、フェルゼンの呪いが、
掛かっているからだった。)

『あなたが、“鍵”をフェルゼンに差し出さない限り。』

『あなたの心は、フェルゼンから解放されない。』

(それが、紫苑に掛けられた呪いだ。 だが、そのことを、
紫苑の他、知る者は、居なかった。)

『彼と同じように。』



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