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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-5


「そなたも、そうであってほしい。」

(沙羅は、強い瞳で、夏樹を見た。)

「はい・・。」

(力を失った夏樹には、戸惑いがあった。
今、自分に何が出来るのか。)

(沙羅は微笑んだ。 不安げに頷く夏樹の姿に。
聖を思い浮かべた。)

(夏樹からは何の力も感じなかった。 その胸に、
巨大な時の欠片、“鍵”を隠しているとは、気づけないほどに。)

(ただの人と、変わりなかった。)

(それなのに、夏樹の存在は、沙羅を惹き付けた。)

『聖は、“鍵”に、夏樹の持つ力に、

惹かれたわけではない。』

『彼、そのものに、惹かれたのだ。』

『だからこそ。』

『力を失わせれば、“鍵”を奪うことが出来るかと。』

『あるいは。』

『力を失った彼を。 愛せるのか、自身に問うために。』

(紅い化粧に映える、長い睫毛が瞬いた。)



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