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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-6


「許せよ。」

「あれは、不器用な男じゃ。」

(夏樹には、沙羅が聖のことを話しているのだと分かった。)

(良く知る長年の友のことを、沙羅は、苦い思いで振り返りながら笑った。)

「そなたが、あるいは、そなたの友が。

聖でも解くことが出来ない呪いを。

解くと信じておる。」

「強い力ゆえ。」

「想いをコントロール出来ないのじゃ。」

「強く想う相手であればこそ。」

(沙羅は、美しい天女の様に纏う衣を靡かせ、夏樹の顔を覗いた。)

(長い黒髪が、肩に揺れ、白檀の香りと共に、紅い唇が微笑む。)

(流れる髪から覗く額に、赤い文様が花開き、透明の花の髪飾りが、
朝日に煌めいた。)

「そなたを愛していることに、間違いはない。」

「そなたなら超えると、信じておる。」

(夏樹は、静かに、沙羅の言葉を聞いた。)

「果たして、呪いは。」



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