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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-79


(夢だったのかと、我が目を疑ったが。
辺りに残る、水滴と瓦礫の山。 何より、怪我を負う、少女が倒れていた。)

(幸い、獣は、砕けた瓦礫に足を取られ。 攻撃は、少女の急所を逸れ。
少女は僅かに、腕を切っただけだった。)

「どうした・・?」

「なぜ、戦わない。」

(勝は、レンズ越しに見た、夏樹の。 苦し気な表情に、眉根を寄せた。)

(だが、勝のカメラは、確実に。 獣と能力者の姿を捉えた。)

(その場に居た者は、瞬間の衝撃に、行動することが出来なかった。)

(衝撃が去った今、少しずつ、人々は動き始め。)

(混乱の中、水浸しの街角を。 写真に収める者も幾人か居た。)

「救急車を。」

(勝は、少女に駆け寄り。 人目を避けるように庇い、
氷置を中心に、警察官がその場を整理した。)

ピーッ ピーッ

(車両と、行き交う人々の足音の中。
勝は、間近で浴びた水滴を。 額から払った。)

***

(夏樹の胸の中で。 時の欠片は、少しも反応しなかった。)

(“鍵”と呼ばれる時の欠片は、“闇化”をしない代わりに。
夏樹の風の能力を消し去っていた。)



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