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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-80


「どうして・・っ。」

(夏樹は、唇を噛んだ。)

「・・どうして。」

(夏樹は、最も風の力を欲した。)

(守るべき人が、目の前に居た。 そんな時、夏樹の問いかけに、
風が、応えなかったことは、今まで一度も無い。)

(夏樹は、風を望んでいた。)

「う・・っ。」

(苦しみと、自分の甘さに、押しつぶされそうだった。)

『これが、人間になるということなんだ。』

(あるいは、風が応えてくれるかもしれないと、願ってしまった。)

『普通の人間になるということは。』

『風を捨てることだった。』

(目の前で、人を救えなかったことが、夏樹を絶望させた。)

(自分の長年の望みと。 現実は、受け入れがたいものだった。)

(何かを得るためには、何かを捨てなければならない。)

(夏樹は、今、普通の人間になって居ることを実感しながら。)

(葛藤に、自分の胸元を、強く握り締めた。)



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