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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-8


(強い沙羅の言葉に。 夏樹は息を飲んだ。)

(見え隠れする自身の心を、見透かされるようだ。)

「彩さんは、意思の強い人だ。」

「今は、“闇化”を起こし、“欠片”を望む、自分の心を抑え、

フェルゼンの呪いと戦っている。」

「でも、いつまで耐えられるか分からない。」

(深い紺色の瞳が、強く、沙羅を見つめた。)

(沙羅の指先は、夏樹の氷の様に冷たい胸に触れ。
強く、抑えた。)

「呪いに囚われすぎてはいかん。」

「呪いがあろうと。」

「生きるすべはある。」

(夏樹に選択肢はない。 その時はすぐに、自身の命を捧げると。
その目が告げていた。)

「このまま。 力を失ったままならば。」

「“闇化”は起きないかもしれない。」

「それでも。」

「それでも、その時は来る。」

(言いながら、夏樹の声は震えた。)



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